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私の手の倫理(17)「使う手」とデザイン

手で物を持った瞬間が心地良いと
品物にはより愛着が湧いてきますね。
化粧品メーカーさんの商品パッケージ
の美しさに惹かれ、何故その形なのかを
見つめると創り上げて送り出す時点で
"これから使う人の手"の気配も乗って
いるかに思えてきます。

蓋や容器を持ち、触れる部分に丸みや
膨らみ凹み揺らぎが絶妙に入っている
ものは手の座りや収まりが落ち着いて
中身を出して使う前後にも親しみが。
蓋=頭を開け閉め、ボディ=中身の入る
胴体…とこれらの全部を本体として
手の内の重量感や収まり具合はよく
手に取るカップやペットボトルの
無意識な形状記憶にも近いです。

毎日数回使う動作の蓄積に容器の触感で
"此処にある!"が解れば、鏡や洗面台
から顔を外して確認しなくても定位置の
習慣化が手から創られて日々が進んで
いきます。ポーチの中で迷子になりがち
な口紅やマスカラも煌めく姿を生む独特
の立体と質感で、手が目になり探って
いて"あった!"となる事も多いですね。

溶液を抽出、クリームを掬う行為など
中身を肌に塗布するだけでなく容器本体
も触れ続けると体のパーツに繋がりゆく
様な不思議さも。
なのでやむなく容器が劣化や破損し
手が慣れたものを文字通り"手放す"
場合、次のものが馴染む迄同じ内容物
だとさながら器の出会い直しです。
私達の手を先見する使い易さや特性を
纏うデザインは、自然に場や行動導線も
生んでいます。リモデルに新商品が効能
効果は勿論ながら今後もどんな佇まいで
現れてくれるか楽しみです。

(Y.I.さん)