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音声版『感性でよむ西洋美術』

盲学校にはいまだに美術の教科書がないと言われています。実際には、教科書がないわけではなく、晴眼児と同じものが配布されるのですが、当然、図版だらけのそれは見えにくい/見えない子供にとっては容易にはアクセスできません。これでは「美術は自分たちには関係ないんだな」というネガティブなメッセージが伝わるだけです。また、生活訓練などに時間と労力が割かれるため、美術教育にまで手が回らないという事情があります。

そこで、美術に関心をもった人のために、音声で聞くことができる、入門者むけの西洋美術史のコンテンツを作成しました。全体で約170分とコンパクトなサイズなので、倍速なら1時間半もあれば全て聴き終えることができます。教科書の代わりになるか分かりませんが、西洋美術を楽しむひとつのきっかけになれば幸いです。

本コンテンツのもとになっているのは、2023年にNHK出版から刊行された『感性でよむ西洋美術』という本です。この本を著者である伊藤亜紗自身が朗読しています。その際、もともと32枚あった図版のすべてに、言葉による説明(イメージディスクリプション)を加え、図版がなくても本文の内容が楽しめるように工夫しています。また、本全体が大学生に対する授業という形式をとっているので、その雰囲気をより出すために、研究室の学生4名にも、朗読に参加してもらいました。

思えば、小説の中に絵画が描かれるときは、基本的に図版はついていませんよね。それと同じように、このコンテンツも、図版なしの美術の入門書です。あるいは入門書の形をとったラジオドラマかな?

本コンテンツの構成は、全6章です。これに「はじめに」と「おわりに」がつき、途中に学生たちが参加するワークショップが2つ挿入されています。したがって、コンテンツは全体で10の部分からなり、すべて別々のファイルになっています。章の構成は、第1章の「ルネサンスの夜明け」から、第6章の「抽象画「わからなさ」を感じる」まで、時代順です。

さいごに、わたしがこの世で一番苦手なもののひとつは音読です。つっかえてばかりで聞きにくいかと思いますが、どうか寛大な耳でお楽しみください。いつか、もうちょっと聞きやすいバージョンを作りたいなと思います。あ、学生たちの音読はとっても上手です。

はじめに

第1章 ルネサンスの夜明け

ワークショップ 比較の練習

第2章 ルネサンス 「理性」を感じる

第3章 バロック「ドラマ」を感じる

ワークショップ 「ぽさ」さがし

第4章 モダニズム 「生々しさ」を感じる

第5章 キュビスム 「飛び出し」を感じる

第6章 抽象画 「わからなさ」を感じる

おわりに 

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私の手の倫理(14)心と声を表す手

食道がんで喉頭摘出をしてから
肉声の無い生活をしています。
今迄は口から噴霧の如く響かせ届けて
いたものが2020年春先の術後は、
言葉や感情の多くが相手の方の視界に
入って見せ伝えるものになりました。
タブレットへの文字入力、筆談、手話、
ジェスチャーに表情…とさながら
気持ちに字幕を付ける感覚です。
(映画の文字表示で"まさにこれだ!"と)
相手を待たせたくなくていかに
短く言葉へ的確に想いを込めようか…
迷う時には首よりも"手首を傾げる"
という独特の癖も現れ馴染みのものに。
"口を突いて出る"筈のものが手の方に
降りてきているからかもです。
言葉にはなりきらない宙を掬う手話や
手振りが、咄嗟に出てしまったりも。
それでも相手の方が〇〇なのね!と
雰囲気で解ってくれる事も多く、
受け手の感覚と自身の朦朧な手の所作に
甘える事もあります。

この生活も2年を過ぎて、文字伝達の
表記も変化しています。
例えば言葉で"おいで!"という時、
"おいでぇ!"なら目配せをして
強めの手招きになり
"おいでぇええぇぇ!"だと、大きく
声を張り呼び寄せながら両手を広げて
迎える…みたいな違いが出ます。
実際の手の振りや顔の表情で足りない
感情の起伏背景、それが打ち込みでも
語れる事になってきましたね。
消えた肉声の変換を文字並びに大きさ、
熱や声量の伸びに強弱…の微調整が
指先でも出来ると嬉しくなります。
この出し方で以前より話も盛り上がり
見せ伝える事は勿論大切ですが、
気持ちを素手で掴めている感があり
自身も"喋れているな"と思えています。

会話の歩き方や振る舞いの中、動作と
文字で"嬉しくて叫びながら駆け寄る"
様なニュアンスが加わると更に
外に現す表情が豊かになります。
意識に輪郭を与え、自他の心へと
伸ばして交流をする手はこれからも
どんな働きをしてゆくか楽しみですね。

(Y.I.さん)

私の手の倫理(13)模倣と伝承の手

油絵と障壁画、浮世絵のクローン
文化財を初めて観てきました。
最先端のデジタル技術と伝統的な
人の模写技術に感性を加えて生まれる
見事な"作品"です。
現存するものを文字通り"手掛かり"に、
修復の手が入る事で広がる世界に
引き寄せられました。

人間と同じく名画も、長く在り続けると
歳を取り怪我や災難に遭ったりも。
劣化、損傷、火災や戦火での焼失…
その甦りには元々の状態の調査、
分析、手色彩など多岐に渡る工程が。
衣食住も今より整っていない時代、
自然や命に意識を研ぎ澄ませ、
制作に没頭したであろう先人達の手。
ゴッホの絵画では絵の具の独特な
盛り上がりに力強い色彩、タッチの
連なりを現代のデジタルが学習して
手仕事も織り交ぜた再現が。
戦前のモノクロ写真だけが残る
「芦屋の〈ひまわり〉」はお馴染みの
〈ひまわり〉を元に、本人の魂の宿る
鮮烈な作品になりました。

クローンでは作品の抱えている経年や
臨場感も画面に刻まれています。
他にもモネ、セザンヌなど
絵画と見る人を仕切るガラスが
無いものも多く、少し強気の姿勢で
うねる筆致や佇み語る色彩を近くに
寄って目に触れられるのは
嬉しい限りです。
うっかり触ったら怒られる様な
高価な一点ものを恐る恐る…でない分
触れ感じる、の敷居が下がって視覚の
触覚が開き易くなりました。
見知っている筈のものが又違って
見えての気付きもあります。
魅力の本質を掘り起こし整え、
数を増やせもする技術の手。
これで名画や文化財が再生出来て
同時に複数の場での展示も可能に。
実際に作品を見る人や知られる時間も
圧倒的に増えるでしょう。
時空を越えて繋ぐ手の出現と活躍で、
私達と美術との関係性が変わる
凄さ面白さが今後も楽しみですね。

(Y.I.さん)

セラフとラジオとおしゃべりと

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長年の相棒だった盲導犬のセラフと2020年の10月にお別れした西島玲那さん。セラフとすごした時間について語り合うラジオを開設しました。その名も「セラフとラジオとおしゃべりと」ラジオ。私は聞き手として、その大切な作業に並走させていただいています。毎回異なるタイトルコールや歌コーナにも注目!編集は研究室の浅見くんが担当してくれています。

セラフとラジオとおしゃべりと①(2020/12/28)

セラフとラジオとおしゃべりと②(2021/1/8)

セラフとラジオとおしゃべりと③(2021/1/21)

セラフとラジオとおしゃべりと④(2021/2/8)

セラフとラジオとおしゃべりと⑤(2021/2/24)新潟逃避行

セラフとラジオとおしゃべりと⑥(2021/3/3)東日本大震災の日

セラフとラジオとおしゃべりと⑦(2021/3/19)Bluetooth

セラフとラジオとおしゃべりと⑧(2021/4/10)初のゲスト:よしひろさん

セラフとラジオとおしゃべりと⑨(2021/4/21)ゲスト:なかむらさん

セラフとラジオとおしゃべりと⑩(2021/5/13)セラフとストライキ

セラフとラジオとおしゃべりと11(2021/6/2)ブラックセラフ

セラフとラジオとおしゃべりと12(2021/6/18)セラフと動物

セラフとラジオとおしゃべりと13(2021/7/9)セラフと結婚

セラフとラジオとおしゃべりと14(2021/7/30)小田原旅行

セラフとラジオとおしゃべりと15(2021/8/20)小田原旅行2