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私の手の倫理(13)模倣と伝承の手

油絵と障壁画、浮世絵のクローン
文化財を初めて観てきました。
最先端のデジタル技術と伝統的な
人の模写技術に感性を加えて生まれる
見事な"作品"です。
現存するものを文字通り"手掛かり"に、
修復の手が入る事で広がる世界に
引き寄せられました。

人間と同じく名画も、長く在り続けると
歳を取り怪我や災難に遭ったりも。
劣化、損傷、火災や戦火での焼失…
その甦りには元々の状態の調査、
分析、手色彩など多岐に渡る工程が。
衣食住も今より整っていない時代、
自然や命に意識を研ぎ澄ませ、
制作に没頭したであろう先人達の手。
ゴッホの絵画では絵の具の独特な
盛り上がりに力強い色彩、タッチの
連なりを現代のデジタルが学習して
手仕事も織り交ぜた再現が。
戦前のモノクロ写真だけが残る
「芦屋の〈ひまわり〉」はお馴染みの
〈ひまわり〉を元に、本人の魂の宿る
鮮烈な作品になりました。

クローンでは作品の抱えている経年や
臨場感も画面に刻まれています。
他にもモネ、セザンヌなど
絵画と見る人を仕切るガラスが
無いものも多く、少し強気の姿勢で
うねる筆致や佇み語る色彩を近くに
寄って目に触れられるのは
嬉しい限りです。
うっかり触ったら怒られる様な
高価な一点ものを恐る恐る…でない分
触れ感じる、の敷居が下がって視覚の
触覚が開き易くなりました。
見知っている筈のものが又違って
見えての気付きもあります。
魅力の本質を掘り起こし整え、
数を増やせもする技術の手。
これで名画や文化財が再生出来て
同時に複数の場での展示も可能に。
実際に作品を見る人や知られる時間も
圧倒的に増えるでしょう。
時空を越えて繋ぐ手の出現と活躍で、
私達と美術との関係性が変わる
凄さ面白さが今後も楽しみですね。

(Y.I.さん)