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WS「視覚のない国をデザインしよう」レポート1( Day 1&Day2)

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ワークショップ「視覚のない国をデザインしよう」@森美術館、無事終了しました。イベントとしては3日間でしたが、最終プレゼンを行ったアドバイザーの方にとっては1ヶ月以上の長丁場。「全員が先天的に全盲の国とはどのような国か?」誰も経験したことのないこの極端な条件をトリガーにして、見える人も見えない人も、当たり前をくつがえす社会のあり方に思いを馳せることができました。(写真撮影:御厨慎一郎、提供:森美術館)

まず、Day1(4月29日:ハード編)とDay2(5月8日:ソフト編)は、抽選で選ばれた30名の方が集まって、アイディア出しをしました。グループごとにテーマが決められていて、アドバイザーのコメントをもらいながら、最初は自由に、後半は具体化を目指してディスカッションを行います。

アイディア出しをする上での「視覚のない国」のルールは3つあります。

1:全員が先天的な全盲

2:進化はしているかもしれない

3:東京のような場所に住んでいる

4:他国との外交はなし

テーマとアドバイザーは以下のとおり。

Day 1 ハード編

• 移動手段:清水俊貴(清水建築設計店、ひかりうんそう)
• 駅とまち:田村圭介(昭和女子大学 生活科学部 環境デザイン学科 准教授)
• 住まい・建築:成瀬友梨(東京大学助教、成瀬・猪熊建築設計事務所)
• 身の回りの道具:本多恵三郎(リーフデザインパーク株式会社、デザイナー)

Day 2 ソフト編

• 食:曽根雅典(nicolas代表、三軒茶屋のカフェnicolas料理担当)
• アート:松川朋奈(「六本木クロッシング2016展」出展アーティスト)
• 情報伝達:森内大輔(NHK デザインセンター 副部長)
• ルール作り・法律:横尾俊成(港区議会議員、NPO法人グリーンバード代表)
• 対話のための情報技術:渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 主任研究員)

参加者から出たアイディアのほんの一例をご紹介します。

・「身の回りのもの」という感覚の消失→いったん手を離れると再び手に取るのが難しい視覚のない世界では、「体に付かず離れず」の身の回りという感覚はなくなるのでは。スペインのバルのグラスのように、「これが私のもの」という所有への固執がなくなり、シェアを前提とした社会になるのでは。

・危険なものの基準が変わる→見える人にとってぶつかることは危険だけど、見えないとぶつかることが増えるので、「お互いさま」の領域が拡大するのでは。

・足の裏でコミュニケーション→遠くを見る必要がないので、4本足で歩くようになるかもしれない。仰向けで歩くようになると、最初に相手に触れるのは足の裏。

・社会のダウンサイジング→「察する」をベースにした社会だから、大きな社会にならないのでは。そうすると新幹線や飛行機といった高速移動もいらなくなる。

・擬態語の進化→触覚や嗅覚がいまより分節化されるようになるかもしれない。

グループワークで話し合ったことは、最後に一枚の模造紙にまとめてもらいます。

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これだけ大規模な一般向けのワークショップを運営したのは初めてだったので、いろいろ勉強になったこともありました。たとえば、準備体操の大切さ。具体的なグループワークに入るまえに、見える人見えない人一緒になって、六本木ヒルズ内のママン周辺にある植物やらベンチやらビルやらを観察したのですが、「見えない」という条件が入ることでいかに場のコミュニケーションが変化するか、その「失語症」のような経験をするかどうかがのちのワークに大きくひびいてくる(初日は、こちらのインストラクションが足らず、ただの「おしゃべり散歩」のようになってしまった)。逆にいえば、ほんの数十分でも参加者のマインドセットや身体の状態が変えることができるのだと実感しました。これもある意味では「変身」。インストラクションの与え方ひとつで、変身の幅が変わってくる、そのワークショップの奥深さを実感しました。

他にも、グループで話し合ったことをまとめる模造紙のサイズも重要でした。初日は美術館側が気を利かせて大きい紙を用意してくれたのですが、これだと参加者にとっては「作業」という感じが強まってしまう。模造紙を書くのはあくまで議論のゴールを設定することなので、作業がためにアイディアがしぼんでしまうのはもったいない!それに模造紙が大きいと、自然と「世界観」のような大きいものを描くことになってしまい、内容がふわふわしたものになりがちです。その反省を活かして二日目は紙のサイズを半分にしてもらい、結果として具体的なアイディアを集めることができました。

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