Project 2025.01

私の手の倫理(18)「座る」を受ける手

ポール・ケアホルムの
ミニマムデザインの椅子を観て座って
きました。
潔い設えは鮮烈ながら人を想う温かさが
あり、其処に身を置く人達の体幹にも
新たな線を引ける様に感じました。

合理的機能性を支えるものには
意識の輪郭や線描点描があります。
素材も革、スチール、成型合板、藤
…と硬さやしなり具合、編み方など
質感ならではの特性も活きてきます。
椅子の横顔からは作品の背骨を感じ、
実際座ると背骨と付随する材質からの
感覚の意外性に驚かされました。

椅子のフォルムによって身体は
腰=落とす、沈める、置く、掛ける
背=もたれる、寄り掛かる、伸ばす、
沿う…などになり
アップルパイの表面模様に似た編みの
座面は、繋ぐ線と隙間で受けられて
いる感が独特です。
腰回りに触れる硬さ柔らかさが膝上の
付加に響き、足への力加減も脱力か
伸ばす方がいいかが異なります。
後ろからU字状に包むものや肩から
手が生えたかの様に支えるものも。
力が分散集約される面の広さ狭さや
傾きで視界も変わります。
今まで座った事のない形では心身の
息遣いや気の巡りも軸が動き穏やかな
拡張が得られますね。

ベッドで長く過ごす入院中には眠り〜
座りの微調整を手元でしていました。
頭から背中の傾斜に腰から足…と
呼吸や重力感の通り道を少しでも
楽にしたく、探りながらより良い所に
決めていきます。定まった時は
"受けられた!"とベッド全体がまるで
自分の別の手になったかの如く不思議
な感覚でした。
日常では一見ありふれた座る事も
休み寛ぎ姿勢を守る…を色々な形で
身を受ける"手"があって、その時々に
出逢える面白さを楽しんでいきたい
ですね。

(Y.I.さん)